出会い系やマッチングアプリに登録すると、途中で「運転免許証などの写真を送ってください」という画面が出てきます。名前も住所も顔写真も載っている書類を、まだよく知らない会社に送ってよいのか。ここで手が止まる人は少なくありません。実際に、個人情報の漏えいの報告は、国の機関に毎日のように届いています。
ただ、法律が出会い系の事業者に求めているのは、書類のすべてを見ることではありません。この記事では、年齢確認について定めた法令の文言、国の個人情報保護委員会が公表している漏えいの件数、そして万が一のときに本人が求められることを、原文と公表資料から順に見ていきます。登録の手順そのものは出会い系の始め方にまとめているので、ここでは「預ける情報」の話に絞ります。
法令が確かめるよう求めているのは、三つの項目だけ
出会い系サイト規制法(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律)の第11条は、事業者に対して、利用者が児童、つまり18歳未満でないことを、あらかじめ確認しなければならないと定めています。その確認の方法は、国家公安委員会規則である施行規則の第5条に書かれています。
施行規則第5条第1項第1号の方法は、運転免許証その他の、年齢または生年月日を証明する書面について、「年齢又は生年月日」「当該書面の名称」「当該書面を発行し又は発給した者の名称」に係る部分の提示、写しの送付、または画像の送信を受けることです。条文が求めているのは、この三つの部分です。氏名、住所、顔写真、免許証の番号は、この方法の文言には入っていません。
同じ第5条には、ほかの方法も並んでいます。マイナンバーカードの電子証明書を使って生年月日の情報を受け取る方法(第2号から第4号)、クレジットカードを使うなど、児童が通常は利用できない方法で料金を払う同意を受ける方法(第5号)、そして一度確認した人に識別符号(IDやパスワード)を付けて、それで確認する方法(第6号)などです。出会い系の画面で「クレジットカードの登録で年齢確認が済む」と案内されることがあるのは、この第5号にもとづくものです。
さらに第5条第3項は、待ち合わせの日時や場所、連絡先といった情報を、ほかの利用者に伝えるやり取りを使わない人については、年齢や生年月日を入力してもらうか、児童でないかを問い合わせて答えてもらうだけで足りる、としています。プロフィールを眺めるだけの段階で書類を求められないのは、こうした決まりがあるからです。
「年齢確認」と「本人確認」は、求める範囲が違う
法律の第11条には、ただし書があります。事業者が、氏名や年齢などの本人を特定する事項の確認を、国家公安委員会規則で定める方法で行っている場合について、一部の確認を省けるとするものです。施行規則の第6条は、その方法として、運転免許証その他の住所、氏名、年齢または生年月日を証明する書面の提示を受けて、住所、氏名、年齢を確認することなどを挙げています。
つまり、事業者が求めるものには二つの段階があります。生年月日と書類の名前、発行者だけを見る「年齢確認」と、住所や氏名まで確かめる「本人確認」です。サービスによっては、なりすましを防ぐためなどの理由で、顔写真や氏名を含めた本人確認を独自に求めることがあります。それ自体は法律で禁じられていませんが、どちらの確認なのか、どの部分を見るのかは、サービスごとに違います。
登録画面で書類の写真を求められたら、まずその画面やヘルプに、どの部分を確認するのか、ほかの部分は隠してよいのかが書かれていないかを探してください。年齢確認だけが目的なら、氏名や住所、顔写真、免許証の番号を付箋や画像の加工で隠してよい、と案内しているサービスもあります。隠した画像では受け付けないサービスなら、それは年齢確認より広い本人確認をしているということです。その差を知ったうえで、送るかどうかを決めればよいのです。
最近は、書類の写真に加えて、その場で自分の顔を撮影させ、書類の顔写真と見比べる方式の本人確認を取り入れるサービスも増えています。なりすましや、他人の書類を使った登録を防ぐには役立つ仕組みですが、そのぶん、事業者に渡る情報は、年齢確認だけの場合よりずっと多くなります。顔の画像は、一度漏れると取り替えることができない情報です。顔の照合まで求められたときは、その画像をいつまで保存するのか、確認のあとに消すのかが、プライバシーポリシーやヘルプに書かれているかを特に注意して見てください。書かれていないまま送るかどうかは、そのサービスをどれだけ使いたいかとの釣り合いで、自分で決めることです。
確認の方法は、警察への届出にも書かれている
出会い系の事業を始めるには、法律の第7条にもとづいて、事務所の所在地を管轄する公安委員会に届け出なければなりません。届け出る事項には、氏名や名称、事務所の所在地、連絡先などのほかに、第11条による「児童でないことの確認の実施の方法」その他の業務の実施の方法が含まれています。施行規則の第1条第5項も、届出書に書く事項として、この確認の実施の方法を挙げています。
つまり、どの方法で年齢を確かめるのかは、事業者が自分で決めて終わりではなく、警察に届け出ている内容の一部です。サイトやアプリの下の方に「インターネット異性紹介事業 届出済み」と受理番号が書かれているのは、この届出をしているという表示です。番号の表示がない出会いの場は、そもそも届出をしていない可能性があり、年齢確認がどう行われているのかも分かりません。書類を送る前に、まずこの表示があるかを確かめるのが第一歩です。
年齢の確認を外部の会社に任せている事業者もあります。施行規則第5条第2項は、確認をして識別符号を付ける業務を受託する者について、破産して復権していない者や、一定の刑を受けてから5年たっていない者、暴力団員などでないことを求め、確認の方法など業務を適正に行うための規程を定めて公表していることを条件にしています。年齢確認の画面が別の会社のページに切り替わる場合は、その会社の名前と、公表している規程やプライバシーポリシーも見ておくと、自分の書類がどこに渡るのかが分かります。
法律の第12条は、事業者が、自分のサービスで児童を性交などに誘う書き込みのような禁止された誘いが行われていると知ったときは、速やかにその書き込みを削除するなど、児童の健全な育成を害することを防ぐ措置をとらなければならないとしています。年齢確認は、こうした見張りの仕組みとひとそろいで、事業者に課されている義務だということです。
警察庁が2026年2月に公表した「令和7年における少年非行及び子供の性被害の状況」によると、2025年末の時点で届出をしているインターネット異性紹介事業者は1,393、サイトの数は2,030でした。同じ資料では、SNSに起因する事件で被害にあった児童は1,566人にのぼる一方、出会い系サイト規制法の第6条(児童を相手とする交際の誘いの禁止など)による検挙は2025年に7件で、2016年の219件から大きく減っています。年齢確認のある場とない場の差が、こうした数字の違いにも表れていると読むことができます。
この差は、書類を送ることへの不安と、天秤にかけて考える価値があります。年齢確認のない場では、書類を送る手間も漏えいの心配もありませんが、その代わりに、相手が18歳未満かどうかを誰も確かめていません。知らずに会って、取り返しのつかないことになる危険を引き受けるのは、利用者自身です。書類を預けることは、そうした危険を事業者と分け合うための手続きでもあります。
漏えいの報告は、3か月で6,101件
個人情報保護委員会は、事業者などから受けた漏えいの報告の処理状況を、四半期ごとに公表しています。2026年9月2日に公表された資料では、2026年4月から6月まで(令和8年度第1四半期)に処理した個人情報の報告は6,101件でした。前の年度(令和7年度)は、四半期ごとに5,652件、4,528件、4,635件、4,602件で、1四半期あたりにならすと4,854件です。
報告の対象になる事態は、個人情報保護法の施行規則で決められていて、資料ではその内訳も示されています。企業などの個人情報取扱事業者からの報告について、今期の件数を要件ごとに見ると、病歴など特に配慮が必要な情報を含むものが3,196件(58.6%)、クレジットカード番号など財産の被害が出るおそれがあるものが1,093件(20.1%)、不正アクセスなど不正な目的によるものが1,450件(26.6%)、本人の数が千人を超えるものが246件(4.5%)でした。一つの事案が複数の要件に当てはまることがあるので、割合を足すと100%を超えます。
資料は、要配慮個人情報の漏えいの多くが病院や薬局での誤った交付によるもので、今期は損害保険の会社での誤交付も目立ったこと、不正アクセスによるものや、クレジットカードの誤送付など財産の被害につながりうるものも多く見られたことを説明しています。出会い系に限った数字ではありませんが、どんな会社でも、人の手違いや外からの攻撃で情報が漏れうるということは、この件数がよく示しています。
| 四半期 | 処理した報告(総計) | うち個人情報取扱事業者 |
|---|---|---|
| 令和7年度 第1四半期 | 5,652件 | 5,007件 |
| 令和7年度 第2四半期 | 4,528件 | 3,916件 |
| 令和7年度 第3四半期 | 4,635件 | 4,086件 |
| 令和7年度 第4四半期 | 4,602件 | 4,130件 |
| 令和8年度 第1四半期 | 6,101件 | 5,451件 |
漏れたときは、会社から本人に知らせが来る
個人情報保護法の第26条は、事業者が扱う個人データについて、漏えいなど個人の権利利益を害するおそれが大きい事態が生じたときは、個人情報保護委員会に報告しなければならないと定めています。同じ条の第2項は、その場合、本人に対しても、事態が生じた旨を通知しなければならないとしています。本人への通知が難しい場合には、それに代わる措置をとることになります。
出会い系のサービスから「お客様の情報が漏えいした可能性がある」という連絡が届いたときは、まずそれが本当にそのサービスからの連絡かを、公式サイトのお知らせで確かめてください。漏えいの知らせを装って、さらに情報を聞き出そうとする偽のメールもあり得るからです。公式の発表と同じ内容なら、どの情報が漏れた可能性があるのか、会社がどんな対応をとるのかを読み、パスワードを変える、クレジットカードの明細を見直すといった、自分でできることを済ませます。同じメールアドレスとパスワードをほかのサービスでも使っているなら、そちらも合わせて変えておくと、漏れた情報を使った別のサービスへの不正なログインを防げます。
使わなくなった情報は、消すよう求められる
同じ法律の第35条は、本人が事業者に対して、保有している自分のデータの利用停止や消去を求められる場合を定めています。第5項では、事業者がそのデータを利用する必要がなくなった場合や、第26条に定める漏えいなどの事態が生じた場合、そのほか本人の権利や正当な利益が害されるおそれがある場合に、利用停止や消去、第三者への提供の停止を請求できるとしています。請求に理由があると分かった事業者は、必要な限度で、遅滞なく対応しなければなりません。
出会い系をやめたあと、年齢確認のために送った書類の画像がどう扱われているのかが気になるなら、退会の前に、プライバシーポリシーで保存の期間や消去の扱いを確かめておくとよいでしょう。サービスによっては、確認が終わった書類の画像を短い期間で消すと書いているところもあれば、退会後も一定期間は不正の防止などのために情報を残すと書いているところもあります。書かれていなければ、問い合わせ窓口に、送った画像をいつ消すのかを聞いてかまいません。
プライバシーポリシーを読むときは、利用目的の欄に「年齢確認のため」と書かれているか、確認のために預けた書類の画像をほかの目的、たとえば広告の配信にも使うと読める書き方になっていないかを見ます。法律の第27条は、本人の同意なく個人データを第三者に渡すことを原則として禁じていますが、法令にもとづく場合や、人の生命や財産を守るために必要な場合、児童の健全な育成のために特に必要な場合などは例外とされています。出会い系のプライバシーポリシーの多くに、捜査機関などからの照会に応じる場合がある、と書かれているのはこのためです。
開示を求めることもできます。第33条は、本人が自分の保有個人データの開示を請求できると定めていて、事業者が何を保存しているのかを確かめる手段になります。請求の窓口や方法は、多くのサービスがプライバシーポリシーの最後のあたりに書いています。
何をどこまで見せるのかを読んでから、登録を決める
年齢の確認は、法律で決められた、どの出会い系でも避けられない手順です。だからこそ、確認の方法と、送った画像の扱いが書かれているかどうかで、サービスを選ぶことができます。リピアイとスグラブは、LINEの友だち追加のあと、身分証で年齢を確かめてから使う仕組みで、ほかの人の自己紹介や受け取ったメッセージを読むのにポイントはかかりません。自分から送るときだけ1通30PTを使い、新しく登録すると130PT(1,300円分)が付きます。
書類の画像を送る前に、手元でしておくこと
送る書類は、できれば、年齢と書類の名前、発行者が一つの面にまとまっていて、ほかの情報を隠しやすいものを選びます。運転免許証なら、表面に生年月日、「運転免許証」という名前、公安委員会の名前が載っています。パスポートや健康保険証など、ほかの書類を使える場合もありますが、どの書類を受け付けるかはサービスごとに決められているので、案内に従ってください。マイナンバーカードを使う場合は、個人番号の載っている裏面を写さないよう、特に注意が必要です。
撮影するときは、背景に部屋の様子や郵便物、ほかの書類が写り込まないよう、白い紙や机の上で撮ります。画像には、撮った場所の位置情報が記録されていることがあるので、スマートフォンのカメラの設定や、送る前の画像の情報を確かめておくと安心です。サービスが隠してよいと案内している部分は、画像の加工で塗りつぶすか、付箋を貼ってから撮ります。
送ったあとの画像を、端末の写真の一覧に残しっぱなしにしないことも大切です。同じ画像を別のサービスの登録に使い回したくなるかもしれませんが、送る先が増えるほど、漏えいの可能性がある場所も増えます。送り終わった画像は消し、必要になったらその都度撮り直すほうが、手間は増えても確実です。クラウドへの自動の保存を使っている人は、そちらに残った画像も忘れずに消しておきましょう。端末を失くしたときに、身分証の画像まで一緒に人の手に渡ることを防げます。
相手から書類を求められたら、そこで止める
ここまでは、事業者に送る話でした。もう一つ気をつけたいのが、やり取りしている相手から、身分証の写真を送ってほしいと言われる場合です。年齢を確かめるのは事業者の仕事で、法律も事業者に義務を課しています。相手個人に書類を見せる必要はありません。
「本当に同じ年代か確かめたい」「安心したいから」と言われても、身分証の画像を個人に渡すと、氏名や住所、生年月日がそのまま相手の手元に残ります。その情報は、なりすましや、つきまといの手がかりにもなり得ます。相手の年齢が気になるなら、年齢確認の済んだ利用者だけが使える場でやり取りしていること自体が、その答えになります。書類を求める相手とは、やり取りを止めるのがいちばん安全です。相手が18歳未満かもしれないと感じたときの考え方は、相手が18歳未満かもしれないときの記事にまとめています。
見せる範囲を自分で決めるために
出会い系の年齢確認は、子どもを守るために法律が事業者に課している手順で、利用者にとっても、年齢を偽った相手と知らずに会ってしまう危険を減らす仕組みです。そして法令が確かめるよう求めているのは、年齢か生年月日、書類の名前、発行者の三つの部分です。それより広い本人確認を求めるかどうかは、サービスごとの判断になります。
漏えいの報告は、国の委員会に3か月で数千件届いています。どの会社にも絶対はないという前提で、何を見せるのかを案内で確かめ、送った画像の扱いをプライバシーポリシーで読み、使わなくなったら消去を求める。法律が本人に認めている手段を知っておけば、身分証を送る不安は、ずいぶん小さくできるはずです。
出典:インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律 第11条、同法施行規則 第5条・第6条、個人情報の保護に関する法律 第26条・第33条・第35条(いずれもe-Gov法令検索で2026年10月31日に確認)、個人情報保護委員会「令和8年度第1四半期における漏えい等報告の処理状況」(2026年9月2日)。


