セフレが妊娠したら|中絶に男性の同意は要る?認知と扶養、母体保護法と民法で整理(令和6年度12.8万件)

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体の関係を続けている相手から、「生理が来ない」「妊娠したかもしれない」と連絡が来た。この記事は、そのとき男性の側が何を知っておき、どう動けばいいかを、法律の条文と国の統計にもとづいて整理したものです。どうするかを決めるのは、最終的には妊娠した本人です。そのうえで、男性にできること、してはいけないこと、法律が男性に求めていることを、順番に見ていきます。

先に、いちばん大事なこと

  • 産むか産まないかを決めるのは、妊娠した本人です。法律が中絶に求めている同意は、本人と「配偶者」のもので、体の関係だけの相手は、条文の上ではその「配偶者」に当たりません。
  • 子どもが生まれた場合、父親が認知すれば、法律上の親子関係が生まれ、子どもを扶養する義務が生じます。認知しなくても、子どもの側から認知を求める裁判を起こすことができます。
  • 連絡を絶つ、責任を押しつける、決断を急がせる。この三つは、相手を傷つけるだけでなく、あとで自分の立場も悪くします。

連絡が来たその日に、男性がやること

最初にやるべきことは、相手の話を最後まで聞くことです。驚いて「本当に俺の子なのか」と聞き返したくなる気持ちは分かります。けれど、その一言は、相手の中に長く残ります。確かめなければならないことは、あとでいくらでも確かめられます。最初の連絡の段階で必要なのは、相手が一人で抱えていないと伝えることです。

次に、相手の体の状態を確かめます。市販の妊娠検査薬で陽性が出たのか、まだ検査をしていないのか。検査薬で陽性が出ても、それだけで妊娠が確定するわけではなく、産婦人科で診察を受けて、子宮の中に妊娠していることを確かめる必要があります。病院に行く日を決めること、行くための費用をどうするかを話し合うことは、男性が最初に一緒に担える具体的な役割です。

検査薬を使う時期にも目安があります。市販の妊娠検査薬の多くは、生理の予定日から1週間ほどたってから使うものとされていて、それより早いと、妊娠していても陰性と出ることがあります。陰性だったからといって安心しきらず、生理が来ないままなら、もう一度検査するか、病院で診てもらうよう勧めることも、男性にできる気づかいの一つです。

病院に行くときの費用の話も、早めに切り出しておくと相手の負担が軽くなります。妊娠を確かめるための診察は、多くの場合、健康保険が使えない自由診療になります。中絶を選んだ場合の手術も、健康保険が使えないのがふつうです。金額は病院や妊娠の時期によって変わるので、相手が病院で聞いてきた内容をもとに、どう分担するかを二人で決めていけば十分です。

この段階で、産むか産まないかの話をこちらから切り出すのは避けたほうがいいでしょう。相手自身がまだ気持ちの整理をしていない時期に、選択肢を一つに絞るような言い方をすれば、相手は追い詰められたと感じます。自分の考えを伝えるのは、相手が自分の考えを話し始めてからで十分です。相手が黙ってしまったときも、答えを急かさず、「決めるまで一緒に考える」とだけ伝えておけば、相手は次の連絡をしやすくなります。

数字で見る、望まない妊娠の今

こども家庭庁が所管し、厚生労働省がまとめている衛生行政報告例によると、令和6年度の人工妊娠中絶の件数は127,992件でした。前の年度より1,258件、率にして1.0%増えています。15歳から49歳の女性1,000人あたりの件数、実施率は5.5でした。

年齢 件数(令和6年度) 前年度との差
20歳未満 10,844 +791
20〜24歳 33,663 +1,116
25〜29歳 28,676 +797
30〜34歳 22,424 ▲176
35〜39歳 20,386 ▲993
40〜44歳 10,878 ▲292
45〜49歳 1,079 +6

件数がいちばん多いのは20代前半で、33,663件。実施率でも20歳から24歳が11.1と最も高く、次が25歳から29歳の9.1でした。20歳未満は10,844件で、前の年度より7.9%増えています。一方で、30代後半は20,386件で、前の年度より993件、4.6%減りました。

5年間の動きも見ておきます。令和2年度は141,433件でしたが、令和3年度には126,174件、令和4年度には122,725件まで減りました。それが令和5年度には126,734件、令和6年度には127,992件と、2年続けて増えています。20歳未満を年齢ごとに見ると、いちばん多いのは19歳の4,976件、次が18歳の2,899件で、16歳は前の年度より19.1%増えました。

この数字は、結婚していない人だけのものではありません。夫婦のあいだでの中絶も含まれています。それでも、30代から40代前半にかけての件数を合わせると、5万件を超えます。若い人だけの問題ではなく、どの年代の相手とも起こりうることだと考えておく必要があります。避妊の方法とその限界については、避妊とアフターピルの記事に詳しくまとめています。

中絶に、男性の同意は要るのか

人工妊娠中絶について定めているのは、母体保護法です。第14条は、都道府県の医師会が指定した医師が、決められた条件にあてはまる人に対して、「本人及び配偶者の同意を得て」人工妊娠中絶を行うことができると定めています。

ここでいう配偶者について、母体保護法の第3条は、婚姻の届出をしていなくても、事実上、婚姻関係と同じような事情にある人を含むと定めています。つまり、法律が同意を求めているのは、本人と、夫、または夫婦と同じように暮らしている事実婚の相手です。恋人とは違う形で体の関係を続けているだけの相手は、条文の上では、この配偶者には当たらないと読めます。

そのため、相手が結婚していない場合、中絶にあたって男性の同意は、法律の上では求められていません。病院によっては、トラブルを避けるために相手の男性の署名を求めることがあり、そのときに協力を頼まれることはあるかもしれません。ただ、それは法律が男性に決める権利を与えているということではありません。

相手が結婚している場合は、話がまったく変わります。法律が同意を求める配偶者は、相手の夫です。母体保護法の第14条第2項は、配偶者が分からないときや、意思を表示できないとき、妊娠したあとに配偶者がいなくなったときには、本人の同意だけで足りるとしていますが、夫がいて意思を示せる状態なら、夫の同意が問題になります。既婚の相手との関係では、妊娠そのものが、相手の家庭と相手の夫を巻き込む出来事になるということを、最初から知っておく必要があります。

中絶ができる時期には、限りがある

母体保護法の第2条は、人工妊娠中絶を、胎児が母体の外で生命を保つことのできない時期に行うものと定めています。その時期は、国の通知で妊娠22週未満とされています。さらに、妊娠の初めの時期と、それより後とでは、体への負担も、手術の方法も変わります。

妊娠の週数の数え方も、知っておくと話がかみ合います。妊娠の週数は、最後の生理が始まった日を0週0日として数えます。関係を持った日から数えるのではありません。そのため、「生理が遅れている」と気づいた時点で、すでに妊娠4週から5週ほどになっていることが多く、22週未満という期限は、男性が思っているよりも早くやってきます。相手が病院で週数を聞いてきたら、その数字を二人で共有しておくと、あとの話し合いが具体的になります。

男性の側が「少し考えさせてほしい」と言って返事を先延ばしにすると、その間にも時間は進みます。決めるのは本人であっても、本人が考えるための時間を、男性の迷いが削ってしまうことがあります。自分の気持ちが決まらないときでも、相手が病院に行くことや、相談窓口に連絡することを止めてはいけません。

生まれた場合に、法律が男性に求めること

相手が産むと決めた場合、結婚していない二人のあいだに生まれた子どもと父親との法律上の関係は、認知によって生まれます。民法の第779条は、嫡出でない子は、その父または母が認知することができると定めています。認知は、戸籍法にもとづく届け出によって行います。

認知は、子どもが生まれる前にすることもできます。民法の第783条は、父は、胎内にいる子でも認知できるとし、その場合は母の承諾が必要だと定めています。生まれる前に認知しておくと、出生のときから親子関係がはっきりします。

父親が自分から認知しない場合でも、子どもの側から認知を求めることができます。民法の第787条は、子や、その法定代理人などが、認知の訴えを起こすことができると定めています。父親が亡くなった場合でも、亡くなった日から3年以内なら訴えを起こせます。つまり、連絡を絶っても、親子関係から逃げられるわけではありません。

認知されると、その効力は子どもが生まれたときにさかのぼります(民法第784条)。そして、民法の第877条は、直系の血族は互いに扶養する義務があると定めています。認知された子どもは父親の直系の血族にあたるので、父親には子どもを扶養する義務が生じます。子どもを育てるための費用をどう分担するかは、父母の話し合いで決め、まとまらなければ家庭裁判所が定めることになります(民法第788条で準用する第766条)。

民法の第766条は、子どもを育てるために必要なこととして、誰が子どもを育てるか、親と子どもの交流、子どもを育てるための費用の分担などを挙げ、どの場合も子どもの利益をいちばんに考えなければならないと定めています。この考え方は、認知した父親の場合にも当てはまります。費用の話をするときは、二人の関係のことより、生まれてくる子どもの暮らしを基準に考えることが、話し合いをまとめる近道になります。

出産を選んだ場合、出産そのものの費用には、健康保険から出産育児一時金が支給される仕組みがあります。一人で子どもを育てる親には、児童扶養手当などの支援もあります。どの制度が使えるかは、住んでいる自治体の窓口で確かめられます。男性の側も、こうした制度があることを知っておけば、相手と現実的な話をしやすくなります。

相手が結婚している場合の、子どもの父

相手の女性が結婚している場合、生まれた子どもの法律上の父は、まず相手の夫になります。民法の第772条は、妻が婚姻中に妊娠した子は、その夫の子と推定すると定めているからです。体の関係を持っていた男性が、自分の子だと思っても、そのままでは認知することはできません。民法の第783条第2項も、胎内の子を認知していても、第772条によって父が定められるときは、その認知は効力を生じないとしています。

この推定をくつがえすには、民法の第774条にもとづいて、夫や子、母が、子が夫の子であることを否認する手続きを取る必要があります。つまり、既婚の女性との関係で妊娠が起きた場合、子どもの父が誰になるかは、相手の夫婦の判断と家庭裁判所の手続きに大きく左右されます。相手の家庭を壊さないために何ができるか、そもそも関係を続けてよいのかを、男性の側が一人で決められる話ではないということです。

既婚の男性の場合

男性の側が結婚している場合、認知をすれば、その事実は男性の戸籍に記載されます。家族に知られずに済ませることは、現実的にはほとんどできません。子どもへの扶養の義務は、男性に家庭があっても変わりません。妊娠が分かった時点で、自分の家庭のことを理由に相手に中絶を迫るのは、相手の決断を奪うだけでなく、あとで話がこじれる大きな原因になります。

してはいけないこと

望まない妊娠をめぐるトラブルで、男性の側が取りがちな行動のうち、とくに避けたいものを挙げておきます。

一つ目は、連絡を絶つことです。LINEをブロックする、電話に出ない。気持ちの整理がつかないからといって、相手を一人にすれば、相手は弁護士や家族に相談するしかなくなります。そうなれば、話し合いで決められたはずのことまで、裁判の場で決めることになりかねません。

二つ目は、中絶を強く求めることです。母体保護法は、中絶に本人の同意を求めています。脅すような言い方や、関係を盾にした言い方で中絶を迫れば、相手を深く傷つけるだけでなく、法的な問題に発展するおそれもあります。自分の考えを伝えることと、相手に決断を押しつけることは違います。

三つ目は、相手の周りの人に知らせることです。相手の職場や家族に、妊娠のことを伝える権利は男性にはありません。相手のプライバシーを守ることは、二人のあいだの信頼を保つための最低限の約束です。自分の友人に相談するときも、相手が誰か分かる話し方は避けてください。

四つ目は、お金だけで済ませようとすることです。費用を出すことは大切ですが、「これを払うから終わりにしてほしい」という形で話を切り上げようとすれば、相手は、自分の体と気持ちが値段をつけられたと感じます。費用の話は、相手の気持ちを聞いたうえで、そのあとに具体的にするものです。払うと決めた分は、約束した日に確実に払うことも忘れないでください。

五つ目は、感情に任せて、SNSや掲示板に相手のことを書き込むことです。名前を出していなくても、相手が誰か分かる書き方をすれば、相手の名誉やプライバシーを傷つけたとして、責任を問われることがあります。腹が立ったときほど、書き込む前に一晩おくことが、自分を守ることにもなります。

決めたことは、文字で残しておく

話し合いで決まったことは、LINEやメールなど、あとから読み返せる形で残しておくと、二人のどちらにとっても安心です。病院に行く日、費用をどう分けるか、連絡をどう取り合うか。口で約束しただけのことは、気持ちが揺れている時期には、互いの記憶が食い違いやすくなります。

ただし、記録を残す目的は、相手を責める材料を集めることではありません。相手の気持ちは、時間とともに変わることがあります。最初は産まないと言っていた相手が、考えた末に産むと決めることも、その逆もあります。記録は、そのときどきの約束を確かめ合うためのものであって、変わった気持ちを否定するためのものではないと、自分の中で決めておくことが大切です。

一人で抱えないための相談先

妊娠についての相談は、相手だけでなく、男性の側もしてかまいません。各地の自治体や民間の団体が、妊娠に関する相談窓口を設けています。「にんしんSOS」のような名前で、電話やメールで相談を受けている窓口もあります。こうした窓口では、産む場合と産まない場合の両方について、病院のこと、費用のこと、制度のことを教えてもらえます。

認知や養育費など、法律の手続きについては、各地の法テラス(日本司法支援センター)や、弁護士会の法律相談で聞くことができます。法テラスでは、収入や資産が一定の基準を下回る人は、無料で法律相談を受けられる制度があります。相談する前に、相手とのやりとりの記録や、病院で聞いた週数などを手元にまとめておくと、限られた時間で必要なことを聞けます。相手と話し合いを始める前に、自分の立場と義務を知っておけば、感情的なやりとりを避けやすくなります。

そして、話し合いの結果がどうなっても、それで終わりではありません。中絶を選んだ場合でも、出産を選んだ場合でも、相手の体と気持ちは、しばらくのあいだ大きく揺れます。関係を続けるかどうかとは別に、相手が落ち着くまでのあいだ、連絡に応じる姿勢を持ち続けることが、男性にできるいちばん大きなことかもしれません。

次の関係を始める前に、話しておけること

望まない妊娠を避ける方法は、避妊を確実にすることしかありません。そして、避妊の話や、もし妊娠したらどうするかという話は、関係が始まる前、気持ちに余裕があるときのほうがずっとしやすいものです。避妊の方法、検査のこと、もしものときに連絡を取り合う約束。こうした話を最初にできる相手と関係を始めることが、お互いを守ることにつながります。性感染症の検査については、性病と検査の記事にまとめています。

大人どうしで、最初に約束ごとを話せる場から始める

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体の関係には、恋人どうしとは違う気楽さがあります。けれど、妊娠という出来事は、関係の名前とは関係なく、二人の人生に同じ重さでやってきます。そのときに逃げずに向き合えるかどうかは、関係を始めるときの姿勢で、ほとんど決まっています。避妊を相手任せにしないこと、もしものときの連絡の取り方を最初に決めておくこと、そして連絡が来たら、まず相手の話を最後まで聞くこと。この三つを覚えておくだけで、最悪の事態の多くは避けられます。